今回はFAKEについてのブログです。
アンティークを扱う立場の人間として、とてもデリケートな部分になります。
お客様からのご要望を受けて今日は少しだけお話します。
『私の買ったこれって本物ですか?』
に対する私なりの回答です。
FAKE?
実店舗ですので多くのお客様からご相談があります。
大きなお金を使ってまで偽物を買ったなんて、とても残念な話。
『お見せ頂いたこちらはFAKEです』
なんてお返事した時には、涙する方もいらっしゃいました。
言いたくないけれど、聞かれた限りはお応えするのが礼儀だと思いますので出来る限りでお返事します。。
精一杯ご対応していますので、どうかご理解下さい。
文章にすればFAKEの背景が知れるのでお気持ちも和らぐかなと思いました。
※本文ではFAKEと横文字で表現するのもクッションの役割です。
日本にはアンティークが極めて少ない
これは現地の絨毯商人とコレクター達が皆口を揃えて話すトピックです。
この現状を踏まえて
ビジネスでは大きくふたつの動きがあります。
ひとつは、まだ未開の地に本物を届けるということ。
ふたつめは、経験の無い人々を利用すること。
そして残念ながら今は後者の流れが強く働いています。
FAKEを届ける現地の商人がいて、FAKEをアンティークだと言って一般人に届けるお店が多く存在します。
改めて断っておく必要は無いかもしれませんが、メゾン エトルタはもちろん前者の立場です。
イランの仲間と共に、本物のアンティークを日本に届けることを使命にしています。
FAKEは何故成り立つの?
多くのお客様の関心ごとです。
これはREALとFAKEの定義の仕方も関係します。
遊牧民が手がけたものかどうか。
ただただ時間を経ているものであればいいのか。
などなど
お店によってその線引き、その上での定義が異なるので現状の曖昧なアンティークラグの世界となっています。
どのような形であれ、お店の主人がアンティークとして扱った以上はアンティークラグとして日本市場に出てきます。
だからこうなった以上は、経験のある人でなければ判断が出来ないという状況に陥ります。
高級ペルシャ絨毯のように◯◯工房の日付サインがついていれば、安心なんですけどね。
遊牧民の絨毯は言伝(ことづて)で価値が伝わります。
実際のものを見てもらうことでしか、証明がしづらいようなものです。
これはヴィンテージ、オールド、アンティークラグ全般に言えることではあるのですが
価値はやっぱり実物を見て判断することです。
自分で探すは疑わしい
この見出しについては、初めて公に言葉にします。
どの世界でも自分の足で未開の地を拓くだとか、広大な絨毯市場に足を運んでその山の中から目利きしてくる。そんな思想があります。
もちろん私も10代の頃はそんな考えでした。
だけどこれは1人の人間の価値観に偏りすぎてしまいます。リアルなアンティークという普遍的な価値を証明する為にはとても危険なサインだと個人的には思っています。
トレーサビリティが取れない(出所不明も保証人もいない)アンティークラグは、とても疑わしいものです。
私の場合は、まず自身で選びます。選んだそこから更にコレクター達の認印がついたものを選別して貰っています。
自分の未熟さに篩をかける意味でもあります。
熟練のプロ達の選別後、結局は一枚も私の手元に残らないこともあったりします!
だけど
その厳しさを経て手にしたアンティークは、とても輝いてみえるのです。
当店の入荷が特別不規則なのはそんな理由もあってのことです。
FAKEの生産
この話をするとFAKEの生産に関わる人々からは、批判を浴びることは間違いありません。
ただこれは重要な話です。
FAKEは次のように生まれます。
アンティークという言葉が好きな人々に対して、FAKE屋は注文を取ります。
こんなアンティークラグがあるけどどう?
日本人の好きなベージュやダメージが揃っているよ。
あなたには特別に◯◯$で売れるよ。
心が躍る言葉ですよね!
さあお店の人は買いました。
次にFAKE屋は工場に向かいます。
FAKE屋は工場作業員に対して言います。
今日、日本人がこういうアンティークラグが好きだって言ってた。
同じような加工は出来る?
見様見真似でいいから。きっとまた高く売れるよ。
工場で働くのは老人や子どもです。
彼らは危険な薬物を使ってFAKEアンティークラグをせっせと生産しています。
薬品のニオイは身体に毒です。時に薬品が目に跳ねて失明することもあります。
手先もボロボロ。
でも労働者である彼らは言います。
今日も仕事頑張ったね。ご飯が食べれる。
明日も仕事があればいいね。
こんな話は遠い異国のこととして済むのでしょうか。
私たちの行動がすぐにでも現場に直接届く支援ではないかも知れませんが、FAKEを認識していることはより良い判断材料になるかと思いました。
サステナブルだとかフェアトレードという言葉は、これらの現状を知った上でこそ成り立ちます。
私は未だ絨毯屋として修行の身です。
声を大にして言うことはどうしても憚られるので、興味のある方にだけきちんとお届けする意味でここに記します。
これが私の知る裏側の世界です。
世界的には現代の人々が古き良きトライバルラグの製法を再現するなど。とてもとても素敵な取組みも存在します。
絨毯が生まれている事情は様々。興味のある方はご近所の絨毯屋さんなどにも尋ねてみて下さい!
お店が出来ること
アンティークというのはとても魅力的なコンテンツです。
ただその言葉を鵜呑みにするのではなく、実際に手に触れて確かめることから本当のアンティーク探しは始まります。
だから私もお店に来られた方には、丁寧に解説させてもらっています。
私はこう思いますが、あなたはどうですか?
そんな日々の建設的な会話がアンティークの価値を創っていくと思うのです。
これ以上は、くどくどと感じてしまいますね。
どうぞ続きはお店でお話ししましょう。
ここまでお読み頂きありがとうございました。